生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

戦国自衛隊 半村良

初めに文庫を見た時薄さに驚いた。この作品はものの160ページ程度しかない中編だったのか。

 
内容は演習中の自衛隊の補給隊が戦国時代にタイムスリップして歴史改変に関わってしまうという今となってはお約束感すらあるソレなSFの元祖。
産業革命以降のテクノロジーを持って中世に現れ俺TSUEEEをブチかます流れ、どうもマーク・トウェインの「アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー」の換骨奪胎らしく1889年のアイディアだというから驚く。しかしながら局地戦でただただ現代兵器を振り回す大人げないだけの話ではなく原住民(長尾景虎 a.k.a. 上杉謙信)との交渉や(装甲車やトラックが走れる広さの)道路のインフラ整備、現代の知識を吸収してゆくしたたかな戦国の人々などが程よくリアルに描かれており、それでいて弾薬や油が切れた後の話がダレないように思い切り良く駆け抜けるように衝撃のラストに繋がる傑作だった。
 
川中島の戦いにおける車懸りの陣や啄木鳥戦法の新解釈には噴いた。トラックで突っ込むから車懸りって……
新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2012-10-01)
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