生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

葉隠入門 三島由紀夫

シグルイを読んだ時から気になっていた葉隠。

戦国時代にハマって鍋島直茂の強かさ、世渡りが上手いが筋の通った振る舞いに惹かれ、鍋島藩(佐賀)の教えとなった葉隠に対して更に興味が湧いていった。
葉隠本編から読みたいと思っていたものの、聞き書きの候文な上に岩波文庫版は活字が汚くて読みづらそうだったので尻込みしていたところこの本に辿り着いた。
葉隠はその「武士道とは死ぬことと見つけたり」の一文はあまりにも有名だが、決して死を強制するものではなく、江戸幕府樹立から100年経った泰平の元禄時代に「毎日死ぬ覚悟で暮らせ」という時代錯誤でありながら正論でもある話を切々と力強く、かつ毎日を具体的にどう振る舞えば良いか(人前であくびをするな、いつ死んでも恥ずかしくない身だしなみをしろ)が書かれている身近で実用的な本である。
葉隠入門はそのような葉隠のエッセンスに対して三島なりの解釈、元禄文化と戦後20年の高度経済成長期(昭和元禄)を照らし合わせながら噛み合わせ、葉隠によって育まれた三島本人の死生観と共に解説されることにより、優れた葉隠の解説であると共に三島由紀夫という人物を読み取るという二つの楽しみ方を同時に味わえる文となっている。この文は三島が自決をする三年前に書かれたものであるが、ここに記された「自由意思の極致のあらわれと見られる自殺にも、その死へいたる不可避性には、ついに自分で選び得なかった宿命の因子が働いている」という文がその最期について考えさせる。
三島への興味も再燃してきたが、ここは葉隠そのものへの興味を優先して次の本を手に取りたい。
葉隠入門 (新潮文庫)
葉隠入門 (新潮文庫)
posted with amazlet at 14.01.02
三島 由紀夫
新潮社
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