80年近く読み継がれているだけあって、良い本だと思う。
人との接し方の基本として理想的だ。
唯一抵抗があった点としては、切り口、語り口、あらゆる点から著者(もしくはこの本の読者)にとってのイデオロギーが資本主義である前提のような臭いが漂ってくる。それは1937年のアメリカの本であるから避けられないことなのかもしれないが、人間が根底に求めるものがやや曖昧なまま話が進んでいるからのように感じられてならない。
皮肉にも他者が求めるものについては明快に説かれているにも関わらずこの本では自身の求めるゴールが不明瞭であり、その代わりに富を得ることが漠然とした目標と成り代わっているきらいがある。その辺りは古さゆえであり、これはビジネス書であって哲学と地続きの自己啓発書ではないということなのだろうか。その点だけがどうも引っかかりであり毒にも薬にもなると言われる危ういポイントのような気がしてならない。