森田療法についての本。
神経症(今で言う強迫性障害)の治療法であり、何かに「とらわれ」(何回も手を洗い続けたりガスの元栓を締め直したり)た己を「あるがまま」に受け入れることによって克服するという仏教の四諦や悟りのようなものであり、わかるような、わからないような、わかろうとしてできるものでもないような療法。
その「あるがまま」について、壮絶(末期癌、失明、半身不随)な境遇の筆者が口述筆記をした本であり、精神科医であるからなのか余命いくばくかの身であったからなのか、はたまたその両方だからなのか、とても平易で丁寧かつ冷静に書かれている。口述筆記なこともありスラスラと読み進めることができる。
人間らしく生き、目的を達成するために自我を克服する際どのようなアプローチをとるか、その一つとして森田療法というものも方便(仏教用語としての本来の意味)なのだなという感想であった。森田療法というのはものの捉え方がとても東洋的で仏教思想に近く、この本に対する捉え方もやはり対峙するのではなく受け入れる形となった。
- 作者: 岩井寛
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1986/08/19
- メディア: 新書
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