途中他の本に寄り道しながらようやっと読み終えた。
司馬遼太郎晩年の作品であり、良く言えば落ち着きがあり自身の人生に重ねあわせた総括のような空気を、悪く言えば緻密な歴史考証の上に平然とハッタリをかます伝奇作家の側面を失ってトーンの低い作品であったように思う。
北条早雲という人物には以前から興味があり、やはり北条早雲が描かれた小説の代表格としてこれは読んでおきたいと何年も楽しみに積読していたのだがいざ読んでみると何か食い足りないような気持ちになる。代表作である「国盗り物語」を踏襲しているようなところが垣間見えるだけにその違いが目立つ。
地味で司馬遼太郎の作品としては他の作品に引けを取るかもしれない。だが応仁の乱や長享の乱といった戦国時代前夜を題材に扱った作品としては良作なのではないだろうか。