生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

戦争の中に咲く小さな花を愛でる話から急変する、『大砲とスタンプ』6巻

前線だけが戦争じゃない。書類とハンコで戦うドタバタ兵站軍のお話……として今まで読んできた。

のんびりとしたタッチとポンコツ兵器の中で、今までも良い人間悪い人間が死ぬシーンが淡々と、時には突き放したように描かれていたはずなのだがここにきて兵士ではなく市民たちの死がハッキリと重々しく描かれる。

戦争は悪である、という紋切り型の話ではない。戦争の中にはどうしようもないもの、ささやかで輝かしいもの、ままならない中で懸命に生きる人々の美しさ、それでいて多くの不幸を生み出してしまう遣る瀬無さ、善悪や正負が混沌となりその中には人間一人一人の顔が見えてくるものである。不意打ちのように現れる重々しい死が今までのノリで読んでいた後頭部を殴り、涙腺を緩ませる。作品としても、作者としてもこれは大きなターニングポイントなのではないだろうか。

これを作品に絡めるのは余計な話かもしれないが、シリアでは現実にこのようなことが起きているのだとふと思い返すと非常にいたたまれない気持ちになる。

大砲とスタンプ(6) (モーニングコミックス)
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