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生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

ドラマ版とゴチャゴチャになりながら『高い城の男』を読んだ

Amazonプライム・ビデオにてドラマ版の配信がつい先月、2016年12月より始まった本作。ディックの最高傑作の一つとして数えられており、やたらと面陳されている『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』のオマージュ元でもあるということで気になっていたのだが、ドラマの圧倒的ビジュアルに惹かれてこれは読まねばということで原作を読む。

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第二次世界大戦でもし枢軸国が勝利していたら……という歴史改変SFなのだが、いかにもフィリップ・K・ディックらしく至る所に「真贋」がモチーフとして持ち込まれ、ディックの作品に共通する「胡蝶の夢」や「アイデンティティ・クライシス」のような匂いを漂わせる。まぁディックを真面目に読んだのは初めてなのだが。

もしナチスが敗れること無く、そのままその思想を世界中で体現していたらどのようなディストピアが現れていたかということを描いてもいるのだが、個人的に心が踊ったのはその中の細やかな歴史のIFである。

イタリア人でありながら反ファシストとしてアメリカへ亡命したアルトゥーロ・トスカニーニは戦後一度も指揮棒を取ることなく生涯を終える。この世界でニューヨーク交響楽団の指揮者はヘルベルト・フォン・カラヤンである。ウクライナ系ユダヤ人移民二世でユダヤ系アメリカ人であるレナード・バーンスタインは恐らくこの世界に存在しない。

そもそもなぜアメリカが負けてしまったのか?大統領となったフランクリン・ルーズベルトが1933年に暗殺され、ニューディール政策が行われなかった結果アメリカの経済が復活できなかったからである。実際に暗殺未遂事件があったらしく、この件については本作を読んでから知った。

その他にもナチス幹部たちそれぞれの性格やその後の出世とパワーバランス等、知っておくとよりニヤニヤできる部分が多数ちりばめられており、それらが作品をより魅力的なものとして深みを与えている。本筋に関しては読んで確かめておくんなまし。

高い城の男
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