生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

葉隠 II 訳:奈良本辰也,駒敏郎

下巻。葉隠文書六巻~十巻と付録の現代語訳。

六巻から九巻までは佐賀鍋島家の家臣や和尚や領地で暮らす人々の話であり、歴史に大きく名を残さなかった人々による上巻にあった教訓の成功例失敗例のようなキチガイエピソードを満載している。誰々の家臣のナントカ右衛門とその友人だとかその組頭のナントカ之助だとかナントカ兵衛の小姓だとかのオンパレードなので歴史ヲタ的楽しみはあまりなく、ただひたすらヤクザという例えではヤクザの人々に申し訳ないような切腹オンザビーチが書き連ねられている。

「酒の席で便所に行ってる間に酔っぱらいの喧嘩で刃傷沙汰が起きて片方殺されていたので、怖くなって便所に逃げたと誹りを受けるのを免れるためにその場をとりまとめた後、仲直りの盃を持ってきたところをバッサリ斬り殺してお上に報告、そして切腹

「覚えのないイチャモンを付けられて正々堂々果たし合いの場になり、いざ正面から向き合って話してみるとただの勘違いだった、何の恨みもないけれどここまで来てしまったからには武士たるもの刃を交えぬわけにはいかぬ。合意の上真剣勝負の殺し合いで勝利、そして切腹

「渡し船に乗っていたら相乗りしていた百姓に喧嘩を売られたのでその場で斬り伏せ、死体の処理をするように船頭を脅して人気のない所へ行って船頭が死体を埋め終わったらついでに船頭も抹殺、無事帰ってきて素敵な老後を過ごした俺にも昔そんなことがあったのよ。やっぱサムライはこうでなくっちゃねー。」

ジャパニーズサムライイズクレイジー。1716年の本だぞ。関が原が1600年、大阪の陣が1615年、島原の乱が1638年だぞ。戦後70年ってレベルじゃねーぞ

十巻は他国の話なので平野長泰が細川忠興の家に遊びに来た際、細川忠興が「賤ヶ岳七本槍のお前なら仕官先もあるっしょ。細川家にでも仕官もしねーの」と言ったのに対して無言で立ち上がり、庭に小便してから「仕官したらおめーの庭にションベンできねぇじゃん」と言い放ったとかそういうもう少し有名な人たちのキチガイエピソードが読めます。

なんだやっぱりキチガイじゃねぇか。

 

あとは関ヶ原前夜、細川ガラシャ夫人が石田三成に捕虜にされる前に自害した時の話に関して「キリスト教徒だから自殺はできないので家来に槍で突かせた」というような著述が一切なく腹かっさばいたことになってる辺りのキリスト教に対する興味のなさが島原の乱でキリシタンをバッサバッサ斬り殺してた側っぽくあり、なんだか悪い意味で日本人っぽいなぁと。竹中采女は佐賀鍋島じゃなくて大分豊後だけどアンチクライスト的に色々詳しかったのかなぁ。話が逸れた。

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