生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

論語読みのなんとか

 先ほども言ったように、過去における「職業政治家」は、君主と等族との闘争の中で君主に奉仕しながら成長してきた。かんたんにその主要タイプをみておこう。
(中略)
 こういう階層の第二は、人文主義的な教養を身につけた文人〔読書人〕である。かつては君主の政治顧問や、とくにその政治文書の起草者になるという目的で、人々がラテン語の演説やギリシア語の詩作を学んだ時代があった。それは人文学院や王室「詩学」講義所が最初に栄えた時代である。そんな時代がドイツにもあったが、その時期は非常に短く、学校制度への影響は後々まで残ったが、政治的な影響はむろんそれほど深くはなかった。東アジアでは違っていた。中国の官人はもともと、西洋ルネッサンス時代の人文主義者に近い存在で、遠い昔の古典について人文主義的な訓練をうけ、かつ試験〔「科挙」〕によって登用された読書人である、というより、かつてはそうであった。諸君が李鴻章の日記を読まれれば、彼ほどの政治家でも、自分に詩が作れ、すぐれた書家であったことに大変な誇りをもっていることに気づかれるはずである。中国の全運命は中国の古典を中心に発達した監修を身につけたこの慣習を身につけたこの階層によって決定された。当時の西洋の人文主義者に、これと同じような立身出世のチャンスがほんの僅かでも与えられていたら、われわれの運命も中国と似たものになっていたかも知れない。

P35-36

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