生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

リズと青い鳥とノスタル爺

五月八日、曇りのち雨。

勤労。寝不足眼精疲労で気が遠くなる。

退勤後池袋で『リズと青い鳥』を観る。

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いわゆる百合なのかなと思って見に行ったのだが、いわゆる百合ではない。「羨望と絶望、そしてそれらを包み込む愛」と言うとおり二人の主人公、鎧塚みぞれと傘木希美の友情という一言では言い表し難いコンプレックス、字義通り感情の複合であり羨望などで揺れる心理描写、それらが覆る瞬間のカタルシスなどを京都アニメーションの面々が持てる限りの技術で丁寧に掘り下げ、心を抉られる。

冒頭シーケンスからキャラクターの足取りや足音のみで人物表情が表現されている。カメラの揺れ、ピントや光による空気感、実写のような撮影演出をしてきたのが京アニだが、技術を持て余して奇を衒うのではなくそれらがすべてキャラクターの表情を描き出すために注ぎ込まれている。声や顔ではない全身の感情表現のために、高解像度化した現在のアニメだからこそ可能な表現を詰め込んでいる。

今までの京アニ作品のどこかで感じていた戯画化されたケレン味はほぼなく、実写とアニメ両方が使い得る全ての手法をもって心の機微を描き出す。足音のリズム、物音一つにまで表情が込められており、生の音響の含む情報と牛尾憲輔の音楽が一体化し奥行きを生み出してゆく。エレクトロニカ的なマイクの距離を感じさせる劇伴とカメラ演出の奥行きもまたうねりを生み出す。全てを一体化したグルーヴの中に観客は呑まれていく。すごい作品を観た。