生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

人間失格 グッド・バイ 他一篇 著: 太宰治

走れメロス以外の太宰治を読むのは初めてであった。新釈諸国噺お伽草子といった作品に手をつけたこともない。
しかし人間失格という小説は読んでいてイライラすることこの上ない。もしこれを10代の頃に読んでいればまた違ったのかもしれないが、己の中の乗り越えた(はずの)葛藤やジレンマで主人公がグズグズとしており、多かれ少なかれ感情移入できる部分があるからだ。この感じは成人してからTV版エヴァを観た時のシンジ君に対する苛立ちととても似ている。
更に言うなればこの主人公(太宰と言ってもほぼ相違ないだろう)に感情移入しながら己はサッパリこの主人公に敵わないというとこらが更に苛立たしい。それは生まれ育ちの良さ、表面的な道化の処世術もそうだが、なにより女遊びで身につけた「女達者」という匂い、「おまけの附録」としての卑猥で不名誉な雰囲気。
これほどの色魔になれもせず、それとは別の堀木のような「都会人のつましい本性」も身につけられず、今度はただ歳を重ねた己への苛立ちと主人公への嫉妬を覚える。それでしまいにゃ
「自分はことし、二十七になります。白髪がめっきりふえまので、たいていの人から、四十以上に見られます。」
ってんだから今年27になる身としちゃバカヤローフザケンナコノヤローの一つや二つ浴びせかけたくもなる。それが葉蔵になのか、太宰になのか、己になのか。それはもうわからない、全てなのでありましょう。


この本に収録されたグッド・バイにも
「案外、殊勝な事を言いやがる。もっとも、多情な奴に限って奇妙にいやらしいくらい道徳におびえて、そこがまた、女に好かれる所以でもあるのだがね。」
とある。こいつは根っからの女たらしだ。よくわかってる。敵いやしない。バカヤロー。

人間失格、グッド・バイ 他一篇 (岩波文庫)

人間失格、グッド・バイ 他一篇 (岩波文庫)