生きるからにはそれなりに

mochilonという人のブログ

ファンタジスタドール イヴ 著: 野﨑まど

人間失格を読んだのは他でもない、積ん読していたコレを読むためである。
ファンタジスタドールアニメ本編でほぼ生かされていなかった細かい細かい、視聴者にはなにも説明されないにも関わらず徹底された世界観考証や兵器ネタの軍事設定。数寄者のためのトンデモキチガイアニメに更に数寄者のためのトンデモキチガイノベライズがあり、更にそいつが早川書房から刊行され、構成が人間失格のパロディとあっては(ページ数はともかく)多少気合いを入れて下準備をしてから読まざるを得ない。
女体に焦がれる主人公が女を裏切り、裏切られ踏み外してゆくシーンにおける興奮と罪悪感、欲望と嫌悪感のせめぎ合いがとても生々しく心を抉る。野崎まど氏の他の作品を読んだことはないが、これほどの筆力をもってして暗くジメジメとした性に抱く矛盾を執拗に、かつそれ。ここまで上品に書かれては。もはや太宰の人間失格がどうこうという話ではない。たしかに構成と人物もオマージュではあるが素材として消化しきっている感がある。

ファンタジスタドールという物好きアニメの、更にニッチなヘンテコノベライズというとても高いハードル、狭い間口ではあるが、これほど途轍もない完成度を誇るものである。少しでも気になった方はチェックしていただきたい。